さあ2000年だ、ミレニアムだとマスコミは騒がしく世間をあおっている。それに乗せられて、踊らされている奴らも大勢いる。俺にとっては、去年も新年もただ昨日の今日にしかすぎない。どんなに気張ってもうなっても、コツコツ一歩一歩地道に日々の人生を今この瞬間楽しんで生きてゆくだけである。
この写真は、ワイルドウエストを背景にアメリカ大陸をバイクで横断したときのものである。昔西部ではカウボーイたちが馬にまたがり、大地を牛の群れや幌馬車と共に地響きをたてながら旅をした。夜は焚き火を囲み、日焼けしたヒゲ面野郎らが火によって弾ける木の音を耳にしながら、苦いコーヒーを味わいつつ夜空いっぱいに輝く星を眺め、その言葉にならない美しさに魅了されて旅の疲れを癒した。
時代は変わり文明社会は進歩を遂げ、より早く、またより安く、より安全に人や物を運ぶ手段を身につけ、いつの間にかその流れに遅れてはならないと人々は立ち止まって落ち着くことを忘れ、気は焦り心は滅入るようになった。いつの間にか自然界の美しさに包まれて生かされている己を見失い、周りの人と比較しながら追い越そう、偉くなろうと気張って生きている。
ベストセラー、バイブルの中でJESUSは人に見せるために人前で善行をすることに気を付けろと忠告しているが、人は自然を破壊して作り上げた社会の中で人と己を比較し、軽蔑と差別によって罵り合い裁き合ったりしている。みんな己がすごいんだと思われたくて、野心と欲望に身を委ねて生きているようにも見える。自然界の海や砂漠や草原も、また荒野もグランドキャニオンもコロラド・リバーも、互いに比べっこせずにその存在感を表しているのに……みんな自然界の一部として、たくましく命のすごさを表しているのに……そのような自然界を眺めながらその空気を胸一杯に呼吸すると、不思議にも俺が逆に自然界に見守られ、優しく包まれているようにも思えてくる。太陽も月も雲も星もみんな俺たちを暖かく見つめてくれている。人生の旅する俺らを見守っている存在−GOD−がいることを感じさせてくれる。
ミレニアムだと言って騒ぎたい奴は騒げばいい。俺はインマヌエル(原語ではGODが俺らと共にいるという意味)を感じて生きてゆきたい。ミレニアムは必ず忘れ去られる。しかしインマヌエルは、君から決して離れることがない昨日も今日もいつまでも変わらない尊い存在であることを、必ず君の感性に自然界の美しさを感じるように感じさせてくれると俺は思う。